以下に掲げるのは、DBTの文書から、コンセンサスの意味と政治との関連を述べた部分を抄訳したものである。
『まず第1に、政策策定・決定者が、よそでは得がたい情報を提供できる。日々のマスメディアが大量に流す情報の中心は「対立型論争」なので、「われわれは、どのようにコンセンサスに達することができるか」という情報は貴重になる。コンセンサス会議は、けっして政治的プロセスのショートカットをしているわけではなく、政治的プロセスの外側のコンセンサスを促進しているという意味において、政治的プロセスを豊かにしているといえる』。
『コンセンサス会議は、政治に対する直接のリンクは持たないものの、前述したように、結果として大きな政治的影響力を及ぼしている。それはなぜか。
第1に、コンセンサス会議で市民(レイパネル)は、ビジョンや原則などの明快なゴールセッティングをするため、政治家は有権者へのアピールとしてそれを利用しやすい。第2に、コンセンサス会議の「実用的な倫理」という側面。真に民主的なプロセスは「倫理」を生み出すという理解から、コンセンサス会議の結果は、「公衆の倫理的代表意見」とみなしうる。また、コンセンサス会議のテクノクラシーの対抗としての機能がある。専門家は、ときには「専門家」としてよりもむしろ「政治家」として、自らの能力を超える問題に対しても、過剰に解決策を模索する傾向がある。そうした「政治的」専門家よりも、市民からの率直な社会的問題の提起の方が、政治家にとっても信頼できる。
また、コンセンサス会議のプロセスは、本質的に「政治的アピール」である。独立した一人一人の市民からなる「レイパネル」の結論は、バランスオブパワーによるものではなく、対話の結果である。このことは、このプロセスが、一つのデモクラシー空間を形成していることを意味するため、政治的アジェンダとして、取り上げやすい』。 |